「え?い、いや、けしてそんな意味じゃ」
「あはは、冗談よ。これでも現役JK。お茶挽き女子大付属高校の3年生よ」
「ええ!」
 前島が悲鳴に近い声を上げた。
「毎年東大合格者を二けた出している、あの高校なんですか?」
 ほう、そういう事なのか……え?東大?二けた?ちょっと待て、そりゃ世間で言う「超名門私立」ってやつじゃないか?俺はあらためて上条さんをまじまじと見つめてしまった。俺は今そんなすごい人と話しているのか?
「ついでに血統書付きのお嬢様だぜ」
 居間の入口の方から突然声がした。さっきの男の人たちがいつの間にか戻ってきていたのだ。髪を短くスポーツ刈りにしている方の人がにやにや笑いながら続ける。
「君たち、上条フィナンシャル・グループって聞いたことないかい?」
 それは俺でも知っている。東京の駅なら近くにその支店がない方が珍しいっていう、あの大銀行の事か?後から入って来た、こちらは髪が長めで細身の眼鏡をかけた方の人が言った。
「そこの創業家のお嬢様さ。見ての通りと思うか、こう見えてもと思うか、それは日本国憲法が保障する思想信条の自由だが」
「うるさいわね!」
 上条さんは笑いながらも頬を膨らませてソファの側にあったクッションを二人に向かって投げつけた。
「どうせ私は出来の悪いお嬢様ですよ~だ!」
 クッションを受け止めたスポーツマンタイプの方の人が笑いながら続ける。
「いやいや、姫にはお世話になっております。こんな立派な別荘を全革連の本部として使わせてもらってるんだからな」
 こ、この豪勢なお屋敷が別荘?ああ、こりゃ俺なんかとは別世界の人たちだな。そして上条さんはやおら真剣な顔になって前島に尋ねた。
「さて、他に聞きたい事がないなら、園田先生から預かったディスクを渡してもらえるかしら?」