そのまま後ろから近付き、なんと声を掛ければ良いのか迷いながら出たのは、驚くほどか細く、弱々しい声だった。 「あの……」 しかし、そんな小さな声を聞き逃すこともなく、彼女は振り向いた。 それはもう、声を掛けた俺がびっくりするほど、嬉しそうに、花の咲いたかのような、満開の桜にも負けないくらいに眩しい笑顔で。 驚きながらも、俺がこの場に来たというだけで、声を掛けただけで、こんな表情をしてくれる彼女を見ると、嬉しさと同時に愛しさのようなものすら感じられた。