女子の群れに飲まれそうになるのをこらえながら必死に先輩についていく。

 だいぶ歩いてようやくついた先は、屋上に繋がる階段だった。

 「急にどうしたんですか?」

 呼吸を整えながら少し距離をとって先輩の隣に座る。

 
 「悪いか?」

 「はい?」

 「お前に会いにいったら悪いか?」

 制服で口元を隠しながら視線を逸らして言う。
 その仕草があたしの胸をくすぐる。

 「悪くない…です…」

 思わず視線をそらして小声になりながら呟く。

 「てか、この距離なんだよ」

 「え? いや…別に意味はないです、けど」

 「じゃあ、もっとこっちこいよ」

 あたしの肩に手をかけてグイッと自分の方に引っ張った。
 
 また、昨日の屋上の時みたいに肩が触れる状態になって一気に肩に意識が集中する。

 あたしは赤くなる顔を悟られないように両手で口元を覆った。

 「先輩…」

 「んー?」

 「なんで、あたしに会いに来てくれたんですか?」

 チラッと先輩を盗み見しながら聞いてみた。

 少しの間黙ったまんまの先輩。

 「会いたくなったから」

 ちょっとしてから口を開いたかと思えばそんな事をさらっと口にする。

 「……」

 いきなりそんな事言われても何もいえなくなっちゃうじゃないですか…

 って、聞いたのはあたしなんだけどね…

 「なんか言えよ」

 「はい…」

 「それだけかよ」

 「え…と、ありがとうございます…」

 さっきまでは極力体重を先輩にかけないようにしてたんだけど…
 
 今くらいは良いよね… 

 あたしは少し先輩の方に寄りかかった。

 「あたしも、会いたかったです…」

 無意識のうちに出た言葉に驚いてバッと顔を覆い隠した。

 「……」

 先輩も驚いてるのか何も言ってくれない…

 あぁ…引かれちゃったかな…