触れるようなキスにあたしは余計に何も言えなくなってしまった。

 「固まっちゃってかわいいなお前」

 「へ…」

 理解できなくて間向けな返事をしてしまう。

 急に先輩の手が伸びてきたかと思えばあたしの頭にポンと乗せてクシャクシャと撫でてくれた。

 「今日はもう帰ろっか」

 そういって立ち上がる。
 あたしも急いで立ちあがろうとしたらバランスを崩して上のめりに倒れ掛けた時、先輩が見事に支えてくれた。

 「ありがとうございます…」

 腕が胸にあたっていて嫌でも意識してしまう。

 「危なっかしいな」

 ため息混じりでそんな事を言われたらムカツクのに先輩の時はなんとも思わなかった。
 むしろ、嬉しく感じてしまった。

 「ごめんなさい…」
 
 「良いよ別に、そういうところ好きだし」

 「え…?」

 今、好きだしって言ったよね…

 胸がくすぐったくなるのがわかった。
 あたしに背を向けてるからどんな顔をしてるかは分からないけど…

 でも、さり気なく手をつないでくれる優しさが伝わってくるよ…。
 
 「先輩…」
 
 「ん?」

 「ありがとうございます…」
 
 あたしはそれだけ言って少し手を握る力を強めた。

 それに気づいたのか先輩もキュッと握り返してくれた。
 そんなさり気なさが先輩の1番好きなところ。
 
 まだ、知り合ってから何時間しか経ってないのに、先輩のことが気になりかけてるよ…。

 
 ねえ、先輩はあたしのことどう思ってる?

 そんなこと聞けないけど、知りたいよ…

 先輩をもっと知りたいと思った。

 初めての恋の予感がした。