先輩をいきなり呼び捨てにするの!?
 そんなことできない!!

 「む、ムリですよ…」
 「なんで?」

 なんでってわかんないの…?

 「先輩だからですよ…」
 「気にしなくていいよ」

 先輩が気にしなくてもあたしが気にします…!!

 あたしは小刻みに首を振った。

 「なんだよ、嫌なのか?」

 ふてくされたような言い方が少しおかしくて笑ってしまった。

 「なに笑ってんだよ」

 「なんでもないですよ…」
 
 笑いをこらえるのが大変… これ以上笑わせないでください…!

 心の中で叫んでるあたし。

 
 「先輩、おもしろいですね」

 あたしは初めて先輩の顔を見て言った。
 素直に思った事だったから。

 「だから、春樹だって」

 軽くあたしの頬をつねってくる先輩。

 「イタタ…」

 「オレを笑ったお返し」

 まるで子供みたいに言ってくるから余計に笑っちゃいそうになった。

 「じゃあ、春樹先輩って呼びますね」

 「別に先輩なんてなくても良いのに」

 「ダメですよ、女の先輩達に怒られます」

 女のシットは怖いからね…
 あたしは一人で勝手に納得して頷いていた。

 「お前のほうがおもしろいよ」

 「え?」

 その時初めて、先輩が笑ってるところを見た。
 
 ドキ――

 胸がキュウってなるのがわかった。
 肩から先輩に伝わってしまうんじゃないかってくらいにドキドキ言い始めた。


 「……」

 あたしは何も言えなくなってしまってただひたすら先輩の事を見つめていた。

 ――チュッ…

 え…?

 一瞬なにが起こったのか分からなかった。

 でも、唇にそっと手を当てると先輩の唇の感触がリアルに感じた。
 それで、やっとキスされたんだと分かった。