「せんぱ…」

 
 「そういうこと言うなって…」


 「へ?」


 な、なんで…?


 あたしは俯きかげんになる。

 
 「マジ、抱きしめたくなるから」

 
 制服の裾で口元を隠しながら、そう言った。


 その言葉に胸がキュンとしたのがわかった。


 「いい…ですよ…?」

 
 「え?」


 あたしの素直な思い…。


 先輩になら抱きしめられても良い…


 そう言うと、静かにあたしを引き寄せて優しく抱きしめてくれた。


 あたし達は付き合ってるわけじゃないのに、
 
 こうして一緒にいると付き合ってるみたいな錯覚を起こしてしまう…。


 先輩に好きだって言ってしまいそうになるよ…


 「先輩…」

 「ん?」


 あたしは先輩が好きです…

 でも、そんなこと

 出会って間もないあたしに言われたらどう思う…?


 嫌われる…? いやがられる…?

 そんな事ばっかり考えてしまう。


 「あたし…あの…」

 「どうした?」

 何も言う事は無かったんだ。

 でも、

 先輩と話したくて…