お付き合いが許されたのは良いが、清水はいつもと一切変わりなくて。


相変わらず、甘いムードなんて存在していない。


手伝うのが面倒だったので数学は、

桜井先生に“お願い”をしてみると、アッサリ課題を提出しなくても良くなって。


よっぽどバラされたくない秘密があるらしい。


未だに俺は、桜井先生に避けられ続けているけど。


ついでなので、白石のことも“お願い”をしておいた。


来年もあいつの顔なんて見たくないからだ。


便利な…


じゃなくて優しい桜井先生に、感謝しなければならないのかもしれない。


卒業式までの間、清水は大人しく俺の家に通い続けてくれた。


俺のことを好きになってくれたのか、はたまたよっぽど卒業したいのか。




滞りなく終わった卒業式。


感無量の俺は、何だか泣いちゃいそうで。


だけど担任教師の気持ち悪い涙の所為で、俺の涙は引いてしまった。


どうやら問題児二人が無事に卒業したことへの、安堵感もあるみたいだが。


そりゃ、清水の担任なんか本当に大変だったろうから。


だけど俺、就職失敗して本当に良かった。


じゃなきゃ俺達は、一生出会うことだってなかったろうから。


これはもぉ、きっと運命なのだろうと思った。


やる気のなかった教師生活だけど、少しだけ楽しいとも思えてきたし。


何より清水が居れば、どんな生活だってわりと楽しく過ごせそうだし。



「清水、おめでとう。」


「あら、ありがとう。」


珍しく清水は、俺に笑顔を向けてくれた。


きっと、嬉しくて堪らないのだろうな、と。


その笑顔の真意なんて、知る由もなかったからさ。