「あ、それから卒業したら旅行行こうよ!」


まぁ良いやとあたしは、次の言葉を投げて。



「…良いけど、どこ?」


「海外!」


「は?!」



ついでだし、うちの熱帯魚たちも逃がしてあげなきゃ。


どうせなら、海外の綺麗な海が良いのだけれど。



「新婚旅行?」


「…何言ってんの?」


「いや、何かもぉ、今日はいつもに増して会話噛み合ってないっつーか。
何でそんなに楽しそうなの?」


頭を掻きながら岡部は、ベッドに腰を降ろしたあたしに覆い被さって。


何をする気なのか知らないが、とりあえず耳を引っ張っておいた。



「そう、それ。
魚を見つけてね、そしたら魔女の呪いが解けたんだよ!
しかも、夢を見つけてね、だからあとは白タイツだけじゃん?」


「…ごめん、全然理解出来ないや。
てゆーか、痛いし。」


「何で?」


キョトンと聞くあたしに、先ほど引っ張られた耳を押さえながら岡部は、

泣きそうな顔でため息を混じらせて。



「あ。」


瞬間、目に入った物にあたしは、眉をひそめた。


机の上に広げられているのは、刺身のパックだ。



「えっ、いや、これはな?
そう、強盗に入られて、そいつが残して行ったっつーか!」


「うるさい。」


明らかに嘘を並べている顔を一蹴し、口を尖らせた。


先ほどまでの良い気分が台無しになってしまって。


感謝しなければならない魚を食べるなんて、信じられない。



「ちょっ、セナ待って!!」


「馬鹿、恩知らず!」


それだけ吐き捨て、さっさと岡部の家から出た。


あんなヤツは、とりあえず当分無視だ。