それから急いで、父親に電話をした。


印刷会社の件はちゃんと謝り、そして今日のことを伝えた。


どうなるのかはわからないが、あたしは何でも良いから音楽に携わって居たいんだ。


やっとあたしは、夢が出来た。


目標は、誠のバンドをメジャーにすることだ。


タクちんの歌声を、みんなが作り上げた音楽を、

もっと多くの人に聴いてもらいたいから。


寡黙な父親は、あたしの支離滅裂な言葉を理解してくれたのか、

“わかった”と一言だけ言ってくれた。


初めてあたしは、父親に“ありがとう”と告げて。


照れくさくてすぐに電話を切ってしまったが、

きっとちゃんと伝わっているのだろうと思った。


電話をしていた足で、気付いたら岡部の家の前に立っていて。


ついでだから、チャイムを押して。



―ピーンポーン…

「セナ!」


ガチャッと開いた瞬間、岡部はあたしの姿を見つけて抱きついて来て。


気分が良かったので今日は、許してやった。



「ねぇ!
アンタもあたしの白タイツ探すの手伝ってよ!」


「は?」



これであたしの王子様が見つかれば、オールオッケイで。



「え、どっかで売ってんの?
つーか、白タイツってセナちゃんが履くの?」


「…何言ってんの?」


「いや、お前こそ何言ってんだよ。」


首をかしげながら岡部は、あたしを部屋の中へと招き入れた。


コイツは白タイツなんて似合わないので、あたしの王子様とかではないはずだ。


ならば、一緒に探すのを協力して欲しいのだけれど。


王子様がお店に売ってるだなんて、聞いたこともない。