俺の告白も、それからプロポーズも。


当たり前のように流されてしまい、少しだけ悲しかった。


それから二人でピザを取ることになって。


シーフードにしようとした瞬間、いつものように耳を引っ張られて。


だけど怒った顔が可愛かったので、言う通りにしてやった。


笑ってる時の清水は、多分無理をしてて。


普段溜め込んでいる分、

俺の前でわがままな女王様っぷりを発揮する姿を見ると安心してしまって。


泣かないし、弱音なんて他人に絶対言わないけど。


時折見せるその寂しそうな顔に気付けるのは、きっとこの世で俺だけだと思ってる。






「おはようございます、桜井先生。」


「―――ッ!」


笑顔で声を掛けるなり桜井先生は、ワナワナと震えだして。



「昨日のことは、お互い大人として流しましょうよ。
あなたの秘密をバラせたくなかったら、ね。」


「…秘密…?」


耳元でささやくなり桜井先生は、“秘密”って言葉にピクッと反応して。


ニヤリと俺は、言葉を続けた。



「…あのこと、バラされたくなければ大人しくしててくださいね?
それと、清水が卒業するのにも、ご尽力くださればと思いまして。」


「―――ッ!」


目を見開いた桜井先生は言葉を探すように目線を泳がせ、

それを見て満足した俺は、笑顔で職員室へと足を進める。


桜井先生の秘密なんて、俺が知るわけもないんだけど。


人間こんな風に言われれば、何かを想像して焦るのが普通だ。


きっとこの先生にも、何か秘密があるのだろうけど。


これで俺は楽しく平穏な教師生活を続けられるし、

清水も無事に卒業出来るだろう。


俺は悪魔なんかじゃなくて、単に出てる杭を打っただけのこと。


全然悪くないっしょ。