「…セナ?」


「うるさい!
アンタが学校辞めたら、あたしまで卒業出来なくなるでしょ?!
アンタにはこれからも、テストの答え教えてもらわなきゃ困るの!」


「―――ッ!」


戸惑うようにその名前を呼んだ俺に、

清水は声を上げて言葉を並べて。


それを聞き俺は、思わず笑ってしまって。



「…そっか、わかった。」



これが多分、強がりな清水の精一杯の言葉なのだろうと思うと、

俺にはそれだけで十分な気がして。


愛しさばかりが込み上げてくる。



「…就職、決まったんだって?」


「―――ッ!」


俺の言葉に清水は、ピクッと反応はしたものの、言葉が返ってこなくて。


何故嬉しそうではないのか、不思議で仕方がなかった。



「…お父さんがさ、勝手に決めただけだから。」


そう悲しそうな声で言う清水は、先ほどまでの覇気なんてまるでなくて。


その自由を奪われたのだろうと想像するだけで、可哀想になってくる。


きっと本当は、嫌で嫌で仕方がないのだろう。



「じゃあさ、俺と結婚する?」


「―――ッ!」


驚くように清水は、ゆっくりと顔をこちらに向けて。


下から見上げてくる眉をひそめた顔に笑いかけた。



「…アンタ、やっぱり馬鹿だね。」



俺はどうやら、彼女に頭が残念な子だと思われているのだろうが。


至って本気なんだけどなぁ。