「あの!」


声のした方に顔を向けた。


暗い場所に目を凝らすと、男がこちらに近寄ってくる。


キョロキョロとしたが、辺りにはあたし以外に誰も居なくて。



「…あたし?」


そう首をかしげると、男はあたしの前まで来て足を止める。


どこかで見覚えがある顔なのだが、どうにも思い出せなくて。



「僕です、田口。」


“コンビニの!”と後ろのいつものコンビニを指しながら言われ、


“あぁ!”とあたしは思いだした。


確かちょっと前、この男に心配をされ、プリンを買ったのだった。


岡部の家に忘れた、あのプリン。



「…えっと、何か?」


だけど、田口と話すことなんてあたしには何もないし。


なぜ呼び止められたのか、理由すらわからない。



「単刀直入に言います!
実は僕、前からあなたのことが好きでした!」


「―――ッ!」



単刀直入すぎだろう。


ポカンとしたあたしに、瞬間、田口はキョドりはじめて。



「…あの、えっと…。
接客してて可愛いなぁとか思って、それで…えっと…」


そう語尾が小さくなっていく田口にあたしは、

戸惑うことしか出来なくて。


人があたしに向ける“好き”なんて、とてもじゃないけど信用出来なくて。



「…困り…ます…」


使い慣れない敬語も、こんな状況も。


もぉ何もかもグチャグチャで。


とっくに許容量をオーバーしている頭に、無理やりに色々なことが詰め込まれて。


爆発してしまいそうだった。