滞りなく体育祭も終わり、そしてホームルームも終わってしまって。


日当たりの良い窓際の席で西日に照らされながら、

帰ることも、ましてや英語科資料室に行くことさえも出来ずに時が過ぎる。



「清水、まだ居たのか?
戸締りするし、そろそろ帰ってもらえると助かるんだけど。」


どれほどそこに居たのだろうあたしに、

やる気なく教師が鍵の束を持ち上げて言った。


見つめた窓の外に見えるグラウンドにも、すでに人影はまばらになっていて。


ひとつため息をつき、バッグを持ち上げて教室を出た。


さすがにもぉ、あの男も諦めて帰っているだろうけど。


もし居たとするなら、最後に一度、アイツにちゃんと謝りたかった。


これがアイツを利用したバツなんだとするなら、

自分自身が楽になりたいだけなのかもしれないけど。


“ごめん”って言えば、きっとアイツはヘラヘラと笑ってくれると思ったから。





遠回りをし、渡り廊下を渡って隣の校舎に向かう。


英語科資料室の前まで来て、そこで早くなった心臓を落ち着かせている時だった。



「キャッ!」


ドアに手を掛けた瞬間、女のか細い悲鳴のような声が聞こえて。


そのまま、あたしの手が止まる。


耳を凝らそうとしても、厚めのドアだからか話声程度しか聞こえてこなくて。


その内容があたしの耳まで届くより先に消えてしまって。


中で一体、何が起こってるの?


きっと、開けない方が良いってわかってるのに。


なのにあたしは、手を掛けたままのドアを、

ゆっくりと横へと引いて。



―ガラガラ…

「―――ッ!」


その光景に、目を見開いた。