「…ムカつく…!」


玄関でうずくまる清水を折角ベッドまで運んでやったのに、

開口一番がこの台詞。


まぁ、慣れてるから何でもないんだけどね。


次に耳を引っ張られるだろうと予測していたのだが、

今日の清水にその気配はなさそうだ。



「…どーかした?
何か元気ねぇじゃん。」


煙草の煙を吐き出しながら同じようにベッドに腰を掛けると、

いつも通りに寝転がった清水は、俺の膝に頭を預けた。



「アンタになんか関係ない。」


そう漏らした声に俺は、吸い込んだ煙をため息と共に吐き出して。


その口元に煙草のフィルターを近づけてやると清水は、

口をつけた俺の煙草の煙を吸い込み吐き出した。


ひな鳥みたいなその仕草に俺は、口元を緩めて。


どんなに悪態つかれようと、ホントはそこまで強くないの知ってるからね。



「…教師って、楽しー…?」


語尾を伸ばしながら清水は、突然にそう聞いてきた。


少し考え俺は、短くなった煙草を消し、見上げてきたその瞳に視線を合わせる。



「セナとこうやってんのが、一番楽しい。」


「…やっぱ、アンタじゃ話にならないや。」


ひとつため息をついた清水は、ブスッとして体を起こした。


どうやら、求めていた答えではなくて不満なのだろうが。


しょーがねぇじゃん、本心なんだし。



「セナちゃんと毎日会えるし楽しい、って意味だって!」


瞬間、“うるさい!”と言った清水は、いつも通りに俺の耳を引っ張った。


そしていつも通りに俺は、イーッと声を上げる。


久々にちゃんと会った女王様は、何でか知らないけど、非常にご機嫌ナナメらしい。


その理由までは、やっぱりあんまりわかんないけど。