「見せつけてんじゃないわよ、目障りだから。」


そう冷たい瞳で俺達、いや、俺に言った清水は、

ハッと笑ったようにドアに体半分を預けた。


ゆっくりと俺は、桜井先生から離れ、清水へと足を進める。



「…バラされたくなかったら、二度とあたしに話し掛けないで。」


「―――ッ!」


俺を睨み付けるように吐き捨てた清水は、

ドアを開け放ったそのままで、部屋へと入ることもなくきびすを返した。


一切動かなかった脳みそも、指の先も。


こんな立場だからか、追いかけることさえも出来なくて。



「だっ、大丈夫ですよ、清水さんなら。」


そう戸惑ったように桜井先生は、俺の背中に言葉を掛けた。



「…るせぇよ…」


「えっ…?」


「うるせぇんだよ、てめぇ!」


振り返り俺は、低く呟き戸惑う瞳を睨み付けて。


ビクッとした桜井先生は、小刻みに震えだした。



「…アンタの所為でめちゃくちゃなんだよ。
どーしてくれんの?」


「―――ッ!」


「…言っとくけど、俺の好きな女侮辱しないでくんない?
あぁ、俺の片思いなんだけどね?」


言いながら、桜井先生の頬に人差し指を滑らせて。


きっと俺は今、酷く冷たい瞳で見下しているのだろう。


桜井先生は、涙さえも零し始めて。


虫唾が走る。



「…わかったら、俺に二度と近付かないでくんない?
まぁ、アイツの代わりでなら考えなくもねぇけど。」


「―――ッ!」


ハッとしたように桜井先生は、俺の腕の隙間を縫って逃げ出して。


パタパタと、その足音が静かな廊下に響く。