夜風は冷たくあたしを通り抜けて。


まるで、心に大きな穴でも開いてしまったみたい。


あたしはこれから、一体どう生きて行けば良いのだろう。


トボトボと帰りながら、そんなことばかりが頭をよぎって。


不安で不安で、堪らなかった。


焦っても、どうにもならなくて。


どうにもならないから、また焦って。


そんな終わりのない悪循環ばかり、頭の中で繰り返される。


魚は、何のために生きてるんだろう。


あたしは、何のために生きれば良いのだろう。


こんなつまらないだけの世界の藻屑としてなんて、死にたくない。


岡部だけは、そんなあたしの全てを許してくれてるんだと思ってたのに。


所詮アイツも、ただの教師だった、ってことだ。




―ガチャッ…

「ただいま。」


「あら、おかえりなさい。
セナちゃん、これ頼まれてた熱帯魚の餌ね。」


顔を覗かせるなり母親は、それを手渡してきた。



「…ありがと。」


「あと、話が―――」


「セナ!こっちに来なさい!」


母親が声を潜めた瞬間、それを掻き消すほどの大きな声で、

あたしの帰りを待っていたのだろう父親が声を上げて。


怒った顔からも、とても良い話だとは思えなくて。


不思議そうな顔をした妹が、絵本片手にあたしを見上げた。



「…何?」


仕方なくリビングの椅子に腰を降ろし、腕を組んだ父親の向かいに座った。


元々寡黙な父親となんて、ろくに話もしないのに。