「入れよ、何もしねぇから!」


「―――ッ!」


掴まれた腕を振り払おうにも、その手に余計に力が込められて。


そのまま、無理やりに家の中に押し入れられた。


ヘラヘラとしてない岡部にあたしは、どう接したら良いのかもわからなくて。



「これ、各教科の先生から出された課題と、反省文の用紙だから。
白石に渡しといて。」


何をされるのかと思った瞬間、岡部は机の上に置いていたそれを、

突き出すようにあたしに差し出して。


煙草を咥えたその横顔では、何を考えているのかわからなくて。


恐る恐るあたしは、それを受け取った。



「…悪かったよ…」


突然にそう、岡部は口にして。


何に対して謝ってるのかわかんない。


ただ、真剣なその横顔にあたしは、戸惑うように視線を向けた。



「…しっかし、白石にも困ったもんだよなぁ。
セナだって、真面目に進路のこと考えろっつーの。」


だけど次の瞬間、岡部は笑いながらあたしを突き刺した。


18年間夢も希望も目標さえなく生きてきたあたしに、

昨日今日でそんなものが見つかるはずもないって言うのに。


ずっとずっと、そのことばかり悩み続けてきたのに。


あたしだって、真面目に考えてるのに。



「お前どーせ、何とでもなるとか思ってんだろうけど―――!」


泣き出してしまいそうだった。


まるで、馬鹿にでもされてるみたいで。



「…もぉさぁ、こーゆーのやめてよ。
アンタには、マジでうんざりしたし。」


「―――ッ!」


自嘲気味に笑いあたしは、それだけ告げて部屋から出た。


もうちょっとだけ、マシなヤツなんだと思ってたのに。


最低な男だ。