「…そっか、大体の理由はわかった。
あの女、やっぱムカつくね。」


一通りの話を聞き終えあたしは、屋上でため息を漏らした。


“迷惑”だなんて、あの女が言いそうなことだ。


どうせ、あたしのこともそんな風に思ってるに違いない。



「…あの女の話はもぉ良いよ。
それよりセナ、頼みあるんだ。」


「何?」


うんざりした声でそう告げた誠は、突然に言って。


あたしは首をかしげた。



「…お前のクラスの副担任…岡部にさ、“サンキュー”って言っといて。」


「何で…あたしが!」


「俺、キャラじゃねぇし!
なぁ、頼んだぞ?」


強引にそう言って誠は、通話を終了させた。


無理やりにそんなことを押し付けられたって困る。


頭を抱えあたしは、その場にうずくまった。


誠の話から察するに、お礼を言いたいのはあたしだって一緒だけど。


だけど相手があの男となれば、話は別だ。


あたしは今、話なんてしたくないのに。





―ピーンポーン…

散々迷った末にあたしは、結局岡部の家に来てしまった。


チャイムを押すことに緊張したのなんか、初めてだった。



―ガチャッ…

「…セナ…」


頭の上から、あたしの名前を呼ぶ優しい声が聞かれて。


何も言えずあたしは、顔を俯かせたまま。



「入れよ。」


「…良い。
大体のことは電話で聞いたし、誠からアンタにお礼言ってくれって言われただけだから。」



入って、いつもみたいに無理やりヤられたくないし。