「入れよ。」


「…良い。
大体のことは電話で聞いたし、誠からアンタにお礼言ってくれって言われただけだから。」


その場から足を進めることなく清水は、玄関でそれだけ告げた。


だから、俺なんかに用はない、って?



「入れよ、何もしねぇから!」


「―――ッ!」


瞬間に俺は、その腕を強引に引っ張り、清水を無理やり家の中に入れて。


抵抗していた清水の、少し荒くなった呼吸が聞こえる。



「これ、各教科の先生から出された課題と、反省文の用紙だから。
白石に渡しといて。」


煙草を咥えるように俺は視線を下げ、

そのまま突き出すようにプリントの束を渡した。


ゆっくりと清水は、恐る恐るそれを受け取って。


まるで、俺にビビってるみたいで。


罪悪感ばかりが増していく。



「…悪かったよ…」


女に、しかも真面目に謝ることに慣れてなくて。


煙草の煙を吐き出しながら俺は、その顔を見ることが出来なかった。



「…しっかし、白石にも困ったもんだよなぁ。
セナだって、真面目に進路のこと考えろっつーの。」


ははっと笑い俺は、重苦しい空気を打ち消すように話を変えて。



「お前どーせ、何とでもなるとか思ってんだろうけど―――!」


言いながら顔を向けた瞬間、目に映る光景に言葉が出なくて。


泣きそうな清水の顔が、そこにはあった。



「…もぉさぁ、こーゆーのやめてよ。
アンタには、マジでうんざりしたし。」


「―――ッ!」


ハッと笑い清水は、俺に背中を向けた。


その言葉の意味を探すより先に、バタンとドアの閉まる音が聞こえて。


何が起きてるのか、わからなかった。


俺はちゃんと、謝ったはずだったのに。