《短編》空を泳ぐ魚2

白石を帰し、がん首揃えた教師連中に事情を話した。


この時期の3年が、いかに不安な気持ちか。


そんなこともあり白石は、謹慎一週間の処分になった。


まぁ、桜井先生はこっ酷く怒られてたみたいだけど。


多分教頭は、“迷惑”だなんて言われた白石が、

教育委員会にでもチクっちゃうのが怖いのだろうけど。


最近は、PTAですら怖いらしいしね。


そんなのがなくても俺は、

人を見た目やなんかで判断するヤツって好きじゃないし。



「…私…私…」


涙を溜めた瞳を手で覆い隠し桜井先生は、自らの席に腰を降ろした。


まぁこの“お嬢さん”も、こんな知能指数が低い学校になんか来なきゃ、

もーちょっと良い感じの教師をやれてたんだろうし。



「白石は、言うほど根は悪いヤツじゃないですよ。」


そんな言葉を残し俺は、未だ落ち込む桜井先生を残して席を立った。


ホント、やれやれだ。


白石が謹慎になんかなってしまって、

余計に清水が学校に来なくなったらどうしてくれるんだよ。


学校嫌いのアイツが、留年するなんて考えられねぇし。


くそっ!


考えてたら会いたくなるじゃん。


だけど携帯を取り出した瞬間、その手が動かなくなって。


電話したって出てくれないのなんて明白だし。


出てくれなかった時の方が、余計にショックが大きくなるじゃん。


俺、すげぇ馬鹿かも。


こんなにハマってんのに、どーしてくれんだよ。


見上げた空は、いつの間にか星の煌めく真っ暗闇で。


魚の形なんて、見つけられるはずもなかった。