顔を俯かせたままの清水に俺は、戸惑うことしか出来なくて。


いつもの女王様然とした態度は、欠片もなかった。


打ち鳴らす心臓の音で、余計に不安が駆り立てられて。



「なぁ、セナ!
何があったんだよ?」


「関係ないでしょ?
アンタはテストの答えだって教えて―――!」


言い終わるより先に俺は、

瞬間、腹が立ってその唇を奪っていた。


そのまま押し倒しても、

清水は抵抗するどころか指の先さえも動かそうとはしなくて。


一度たりとも、俺に視線を合わせることはなかった。


最高に気持ち良いはずの行為は、

最悪に胸が締め付けられて。


俺はいつの間に、こんなにも彼女のことを好きになっていたんだろう。



なぁ、何考えてんの?


俺らこのまま、終わっちゃうのかよ?


頼むから、俺のこと見ろよ!



行為が終わり、清水は相変わらずの虚ろな目で。


まるで死んだ魚のようだと思った。



「帰る。」


「待てよ、セナ!」


慌ててその手首を掴んだ瞬間、清水は俺を冷たい瞳で睨み付けて。



「…どーせアンタ、あたしが学校辞めたらヤれなくなるから引き留めようとしてるだけでしょ?」


「違うだろ?!
俺はただ―――」


“好きだから、心配なんだよ!”


そう続けるより先に、清水は俺の手を振り払って。



「もぉ良い!」


そして、俺の部屋を出る。


身動きのひとつも取れなくて。


彼女の香りのなくなった部屋で俺は、膝から崩れ落ちた。