「なぁ、セナ!
何があったんだよ?」


顔を俯かせたままのあたしに岡部は、まるで問いただすように聞いてくる。



「関係ないでしょ?
アンタはテストの答えだって教えて―――!」


言い終わるより先に怒った顔になった岡部は、

瞬間、あたしの言葉を遮るように唇を塞いで。


そのまま押し倒された。


その手の動きに、押し殺していても声が漏れて。


床に転がった袋からはみ出してしまったプリンの一点だけを見つめながらあたしは、

こんな時でも感じている自分の体を、ひどく汚らわしいと感じた。


心配してる素振りを見せたって結局、コイツはあたしの体が目当てなだけだ。


テストの答えが目当てのあたしと、同じなだけじゃない。


だったら、嘘でも“好き”とか言わないで。


こんな行為を繰り返しながら考えることから逃げていただけのあたしに、

そんな優しい言葉なんか掛けないでよ。


あたし達はお互いにお互いを、利用してるだけの関係なんでしょ?





「帰る。」


「待てよ、セナ!」


荷物を持ち上げた瞬間、その手首を岡部は掴んだ。


唇を噛み締めながらあたしは、その瞳を睨み付けて。



「…どーせアンタ、あたしが学校辞めたらヤれなくなるから引き留めようとしてるだけでしょ?」


「違うだろ?!
俺はただ―――」


「もぉ良い!」


そう言って無理やりにその手を振り払い、逃げるように部屋から出た。


あたしは一体、何を期待してたの?


追いかけてこないのなんて、当たり前じゃない。


誰も本当は、あたしなんて必要としてないんだから。