それからバイトまでの時間、

誠の“気になる人”のことを、延々と聞かされた。


最近ライブハウスに来ていると言うその女のことをあたしは、

話し半分で相槌だけ打ち続けて。


正直、あまり興味なんてなかった。





それから無事にバイトは終わったのだが、本日ライブのない誠が居ないため、

ひとり寂しく家路につく。


最近誠のバンドは急激に人気になり、

よくライブに出ていたためか、一緒に帰っていたけど。


人気もない、こんな寂しいばかりの帰り道だったのか、と。


ポッカリと空いてしまった心の中で、そんな風に思った。


いつものコンビニに着き、もぉ当たり前のように買うものがなくても店に入る。


何を見ても、物欲も食欲も掻き立てられない。


こんな日は、よく岡部の家に行ってたんだけど。


今日ばかりは、そうもいかないだろうな、と。



「…あの、大丈夫ですか?」


「―――ッ!」


瞬間、声を掛けられてハッとしたように顔を上げると、

店員の男が心配そうに、あたしの顔を覗き込んでいた。



「…えっと…」


「あっ、ごめんなさい!
常連さんだし、今日は元気がなさそうだから心配しちゃって!」


“田口”と名札に書かれていた男は、焦ったように言葉を並べて。


そんな姿に力なく笑いあたしは、横にたまたまあったプリンを持ち上げた。


欲しくなんてなかったけど。


こんな風にされたら、何か買わないわけにはいかなくて。


レジまで持っていき、田口にそれを差し出した。



「…あの、イキナリこんなこと言うと変に思われるかもしれないんですけど。
もうすぐバイト終わるし、僕で良ければ話聞きましょうか?」


「あー…大丈夫です。」


人の良さそうなその顔に愛想笑いを浮かべながら、

100円玉と5円玉を差し出した。


そして小さな袋に入っただけのプリンを受け取り、コンビニを出る。