「…ナ、セナ!
聞いてんのかよ?」


「えっ、ごめん。」


ハッとして顔を上げると、誠がポテトを咥えて不機嫌そうにあたしを睨んでいた。


見渡せば、ファーストフード店の店内で。


そう言えば、と。



「てゆーか誠、何か楽しそうだね。」


先ほど、テンションの高い誠に呼び出されたのだった。


“奢ってやる!”なんて、明日は雪か、雷か。



「…まぁね。
最近、ちょっと気になる人が居てさぁ!」


誰かの顔を思い浮かべたのだろう誠は、嬉しそうにそう言った。


あたしとのテンションの違いについていけず、

曖昧に笑いながらポテトに横から手を伸ばす。



「…良いね、アンタは楽しそうでさぁ。」


「セナは?
そろそろフリー卒業したら?」


“タクちん辺りと付き合えば?”と誠は、まるで他人事で。



「…あたし、束縛されたくないし。
てゆーより、そんなことで悩んでる場合じゃないし。」


「ふ~ん。
何か知らねぇけど、頑張れよ?」



誠のこーゆーところは、結構好きだ。


馬鹿だからか、興味がないからか。


詮索しないでくれるから、誠とは“友達”を続けられる。



「良いよ、あたしのことなんて。
それより聞かせてよ、誠の恋の相手!」


無理やりに笑顔を作りあたしは、話を変えた。


思い出したようにまたニヤける誠に、ホッと胸を撫で下ろす。