「遅ぇよ。」


壁に背中を預けて腕を組む俺を素通りし、清水は英語科資料室のデスクに座る。


返事も聞こえず俺は、ため息を混じらせながら少し重くなった扉を閉めた。


ついでに、ガチャッと鍵も閉めちゃって。



「…何やってんの?」


「見られちゃマズいだろ?」


そう言って俺は、資料の日焼け防止のためにある、

全ての窓に取り付けられた遮光カーテンを隙間なく閉めた。


そして、デスクに腰掛ける清水のもとに近づいて。


キスを落とそうとした瞬間、鼻の頭を引っ張られた。



「イーッ!
離せ、頼むから!!」


「…さっきの、何のつもりよ。」


女王様はデスクの上で足を組み、そして腕を組んで俺を睨み付ける。


涙目になりながらも、一応いつも通りっぽくて胸を撫で下ろした。



「…お前こそ、どーゆつもり?
“辞めても良い”とか、俺が許さねぇぞ?」


「―――ッ!」


デスクに両手をついてその顔に自分の顔を近づけた瞬間、

清水は逸らすように視線を落とした。


ほこりっぽくてカビ臭い、薄暗い部屋。


遠くで聞こえる生徒達の声も耳には入らないほどに、清水の真意が気掛かりだ。



「…ずっと答えない、って?」


「―――ッ!」


瞬間、俺はその顔をこちらに向かせるように頬に手を添え、

そして唇を合わせて舌を捩じ込んだ。



「…ちょっ、やめて…!」


「―――ッ!」


本気で嫌そうにそう言った清水は、俺の体を押そうと抵抗して。


地味にショックで俺は、身を引いて顔を俯かせた。