「おい、起きろ」 俺は気にくわず揺すり起こす。 思い出の木からは充分な距離にあって位置するこのベンチは俺の特等席だからだ。 この公園には合計3つのベンチがある。 入り口近く。ソフトクリームの頭みたいなオブジェの後ろ。そしてここ、茂みの奥。 最後のベンチは目を凝らさなければ気づかない。だから俺のお気に入りなのだ。 なんでこんな良い場所を昔の俺はこの女に教えてしまったのだろう。 本当に馬鹿だ。