―…8時30分

今日から新しいクラス。
学校の中庭でクラス発表がある。
俺はこういった事にはあまり興味無い。

別に前のクラスメイトに会えなくなるわけでもないのに、何故みんなこうもワーキャーワーキャーするのか、理解出来ない。

「…めんどくせェ。」

そう呟いていた矢先、俺の背後から何やら明るい声が話しかけてきた。

「ねぇ、君…黒瀬くんだよね?」

俺は振り返った。…と同時に驚いた。何故ならば、背後から聞こえた声音とルックスとがあまりに違いすぎたからだ。
声は普通に女なのに…

「僕、君と同じクラスなんだぁ♪」
「―…あぁ、そう。」

あまりの驚きに、素っ気ない返事をしてしまった。
俺は普段口数も少なければ目つきも悪く、周りの奴等からは怖がられる。特に今のような返事を返せばみんな去ってしまう。
―…が、コイツは違った。

「ふふっ、僕凄く嬉しい。ずっと黒瀬くんの事、好きだったんだ。」

一瞬流してしまいそうになった。
あまりにも自然に告白の言葉を口にするものだから。

(今…コイツなんて言った?)

俺は心の中にはてなを浮かばせる。

「あははっ。その顔…何言ってんだコイツ、って顔だね?」

あぁ、全くその通りだ。
コイツは男の俺に恋愛感情を抱いているとでも言うのだろうか。
確かに見た目も声も女その物だが…
流石にそれは無いだろう。
ましてや、初対面だ。

「…いや、まぁ初対面だし。」
「こうやって直接話すのは、ね?」

何やら意味深な言葉を吐く。
するとソイツは口許を手で隠しクスクスと笑った。

「僕は君の事、何でも知ってるよ?」

俺は首を傾げた。

(何言ってんだ、コイツ…)

などと思うも、コイツを見れば見るほどそこら辺の女と変わらない。
いや、下手すればそこら辺の女より可愛い…。
が、コイツは正真正銘の男でしかもホモだ。

すると、まるで心の中を見透かした様に眼前のコイツは言う。

「黒瀬くん、今"ホモかよ…"って思ったでしょ-!」
「―…ぇ、あ。」
「ふふっ、まぁそうなんだけど。」

クスクスと愉しそうに俺を見て笑う。
俺は特に驚いた様子もなく口を開いた。

「―…とりあえず、教室に行っていいか?」
「あっ!僕も一緒に…」

背後を必死で追いかけてくる。
しかし、俺はソイツを放って足早に教室へ向かった。