夏の香り



そうして何十分か歩いた頃。




「氷海君!」




目の前には有り得ない人物がこちらに向かって走って来る。


何故だ


何故君が――…




「ハァハァ…遅いから迎えに来た……」




「自転車が故障した。俺はもう高校生だ。迎えなんていらない。」




本当は胸が高鳴っているくせに彼女には素直に言うことができない。


仏頂面のまま。




「そうなんだけど……どうしても報告、したくて……」




報告?


……あぁ、やっぱりそういうことか。