どうしてだろう。
今の私にとっては
一之瀬の存在が大きい。
他の誰よりも大きくて、
錯覚なのではないかと思うほど
一之瀬の存在が大きい。
この気持ちはまさか。
そんな事、考えたくもなかった。
けれど、気持ちは
大きくなっていったんだ。

久しぶりに遊ばないかと
一之瀬からメールが来る。
私は勿論と返して
一之瀬の家にお邪魔した。
家には、一之瀬しか居なかった。
一之瀬は弱音を吐いた。
本当は行きたい高校があるのだと。
もうじき私たちは受験生となる。
親に行かされるようだ。
その事実を知った私は
一之瀬の母が帰ってきた時、
志望校に行かせてやってくれ
と言った。

もうすぐバレンタイン。
隣にいる甚太はわざとらしく言う。

「なあ、美佐。
今年のバレンタインは
誰にあげるんだ?」

「もう。分かってるでしょ?」

「だあれ?」

「甚太だよ…」

「なに甚太?フルネームでお願い」

甚太はよくこうして私をからかう。
私はいじけて甚太に背を向けた。

「わー。ごめん、ごめん。
分かってるって、美佐。
……俺さ、嬉しいよ」

「なんで?」

「美佐が、俺がいいって
言ってくれたから。
行きたい高校にも
行かせてもらえるようになったし。
本当に、感謝してる。
好きだ、美佐」

甚太は私の頭を撫で、
優しい笑みを浮かべる。
それが何とも幸せで
しばらく2人で寄り添っていた。


ずっと2人でいられると思ってた。