それから春休みになるまでの間。
田所は私に何もして来なくなっていた。
川上とも、1度も話していない。

春休みが明けて、
新学年となるこの日。
一番楽しいと言われる
中学2年生となる。
クラスの紙が配られ、
女子も男子も騒ぎながら
クラス替えの結果を覗き込んでいた。

私は3組。杏子と同じクラスだ。
とても嬉しく思った。
けれど。
川上は1組……離れてしまった。
最悪だ。
だけど田所ともクラスを離れた。
とても嬉しかった。
一之瀬は、同じクラスだった。
そして……隣の席。
どうにも様子がおかしいと
思った私は、
思い切って一之瀬に聞いてみた。

「ねえ、一之瀬。
私達って本当に凄いよね。
気持ち悪いくらい、縁があるね」

一之瀬は、はははと笑う。
嬉しそうに。

「ああ、そうだな。有り得ないくらい
お前と一緒だな。だけどさ、
そろそろ気づいても……
いいんじゃない?」

「ん、何に……っ!?」

一之瀬は微笑むと
私に顔を近づけた。
下手をすれば唇が触れそうな位置に
私の心臓はどくどくと
暴れまくる。

「鈍いな……。
まだ気づかないのか?
これは……」

「い、一之瀬の……」

一之瀬は勝ち誇ったように
余裕の笑みを浮かべた。

「ふっ、そうだよ。
席が隣なのも、
田所とクラスが離れた事も。
全部俺がやったんだよ」

今更怪奇現象の真実を知る。

「ぜーんぶ……
俺が金で動かした」

「はっ?」

訳の分からない彼の物言いに
思わず素っ頓狂な声を
出してしまう。

「誰にも内緒だけどな、これ。
俺の家、金持ちなんだよ。
あんまり金持ってないように
見えるだろうけど、これは
ただ隠してるだけ。
家も普通。
金を隠し持ってるだけなんだ。
金が余ってるから
使いたい時は言いなさいっつって。
母さんがな。俺は金を使って
神埼に近づけるよう
色々仕向けたんだ。
田所の件では……
予想外だったけどな」

今でも信じきれない内容を
この少年は淡々と口にしてゆく。
本当なのだろうか。

「ごめん、一之瀬。
凄いんだろうけど
私にはまだ理解できない。
また今度それ話そう」