「あたしと別れたあと、彼の記憶は消えるようになってるから……思い出すことなんてきっとないから」
「……えっ?」
不思議な話。
まるで魔法のよう。
信じられないけど、彼女の様子からただごとではないと思った。
「詳しく聞かせてもらっていいかな?」
ためらいながら、彼女はゆっくり口を開いた。
「……あたしは、彼と一緒にいてはいけない存在なんです。このままだと不幸にしてしまう、だから離れることにしたんです。
そのために彼の記憶が消えるようにしたけど、ちょっとしたことで思い出す可能性があるんです」
あたしは生唾を飲み込んだ。
自分とはかけ離れた世界の話を聞いてる気分になる。
「だからあなたにお願いしたいんです。どうか、あたしが瑠衣の誕生日プレゼントにあげた砂時計を隠してほしいんです」
「か、隠す?」
「はい。彼の前に絶対出さないようにしてください。捨ててもいいし、あなたが持っていても構いません」
必死、そういった様子だった。
これはお願いをきいてあげないとと思った。

