「あなたはすぐこの夏の思い出を忘れるから。悲しむ必要なんてないの」


どうして海羅が人魚なのか、今になってそんな疑問が浮かぶ。


もし彼女が人間だったら、俺たちは幸せになれたのに。



「あのね、瑠衣。たとえ今離れてもまた会えるかもしれないの。この夏あたしたちが再会したように、可能性ならいっぱいあるのよ?」


そんなこと聞きたくない。


今じゃなきゃまた何度も同じことを繰り返すだけだ。


「どうせまた別れるんだろ?」

「あたしが人間になれればいいんだけどね」


自分の運命を呪うように彼女は言った。


結局俺たちは幸せになんてなれないんだ。