俺はポケットから砂時計を取り出した。 力強く握りしめ、真剣に祈った。 ――お願い、時を止めて。 クロノスじゃなくてもいい。 ずっと海羅といたいから。 この夏のまま、一生時が動かないようにして。 どうか、俺と海羅を引き離さないで――― 「海羅!」 「瑠衣、泣かないで。あなたは大丈夫だから」 「大丈夫なんかじゃねぇよ!お願いだからそばにいて……」 「もう無理よ、分かるでしょ?」 子どもをあやすように彼女は言った。