「別に。でもなんで?」

「いや、してないならいいの。じゃあね」


慣れたように岩を軽々と降りた彼女は、そのまま走り去って行った。



「やっぱり変な子だな」


というか、不思議だ。


薄いベールに包まれているみたいな感じ。


あんなに綺麗なのに、人を寄せ付けないような。



俺も岩を降りて、元の場所へ戻って行った。



「あっ、瑠衣!探したのよ!」


パラソルに戻ると、梢が心配していたように言った。


「へっ、おまえの心配なんて欲しくねぇよ」

「なによ、ムカつく。おばさんに言いつけてやる」


小さい子どものように怒って、梢は先に行ってしまった。