「はっ……」
目を開くと、そこは何も変わらない海だった。
急いで隣を見ると、海羅はずっと俺を見ていた。
「海羅……」
お願い、全部嘘だって言ってよ。
人魚なんかじゃないって、笑ってよ。
「海羅!」
彼女の肩を掴んでびっくりした。
「体温が……」
まるで無かった。
温かくも冷たくもない。
「嘘、だろ?」
「瑠衣……」
彼女の顔を見つめながら、俺は大量の涙を流した。
6年前の記憶が一気に俺の中に取り戻された。
海羅が人魚だと打ち明けたあと、彼女は言ったんだ。
『今のこと全部忘れちゃうけど、いつか思い出す時がくるかもしれない……』
その時にまた会おうね―――……