「海羅を助けたいから」
君に縛り付けられた、錆びきった鎖を解くため。
君を苦しめる悪夢から解放するため。
「夢を見たんだ。海羅が泣いてて、何かに怯えてたから」
「あたしが…?」
頷いて、そのまま彼女を抱きしめた。
「俺がいるから…苦しむ必要なんて全くないから」
「……ぅっ」
耳元で彼女の嗚咽が聞こえる。
ゆっくり離れると、涙でくしゃくしゃになった顔があった。
「少しずつ話すから…ゆっくり聞いて」
黙って頷くと、海羅は涙を拭いて海を見つめた。
「あたしとあなたはまえに一度会ったことがある。それは瑠衣と同じ名前とかそっくりじゃなくて、ただあなたが忘れてるだけなの」
「なんで俺は思い出せないの?」
「記憶を抹消したからよ。あたしがそうしたから」
そんなことができたらそれは魔法だ。
でも真剣に話す海羅を見て、それが冗談とは全く思えなかった。

