「ちょっと夜出かけるから」
家族で食卓を囲みながら、俺はさらっと親に言った。
「あんた最近よく海行くわよね。そんなに好きなの?」
「まぁな」
海以上に好きなのは海羅だけど。
「でもよくこりないわよね。中二の誕生日に溺れて大変なことになったのに」
突然母親が昔話を始めた。
そういえばそんなこともあった気がする。
でもなぜかあの時のことはあまり覚えてない。
気がつけばあの岩の近くで寝っ転がってて、一緒に泳いでた友達に見つけられた。
「母さんもあんたを海に連れて行くのが怖くなったけど、本人がそんなんだからね」
「下手したら死んでたぞ」
父親も呆れたように言った。
「別に昔のことじゃんか。だからって怖がってたら情けねぇだろ」
「まぁ確かにね」
食べ終わった食器をさげ、急いで自分の部屋へ戻った。

