「ごめん。もう不安にさせないから」
頭をポンポン叩くと、彼女は顔を上げた。
「あたし、めんどくさくない?」
「ううん、可愛いよ」
「……ありがと。優しいんだね、瑠衣は」
やっと海羅は笑顔を見せて、つられて俺も笑った。
「瑠衣、今夜会って渡したいものがあるの。いいかな?」
突然海羅は立ち上がり、海の方を見て言った。
「いいけど、何?」
「まだ秘密。夜になれば分かるから」
人差し指を唇に当て、いたずらににっと笑う彼女。
「うまく家から逃げ出してね」
「それは海羅の方だろ。あんま親を心配させんなよ」
「…分かってる。じゃあまたね」
海羅は走って行ってしまった。
走る彼女の後ろ姿を見ながら、やっぱりまだ秘密が多い彼女を気にせずにはいられなかった。

