「おーい!」
彼女の肩がピクッと揺れた。
それからゆっくり振り返って、下にいる俺を見た。
「あなた……」
「この前の、覚えてる?」
「もちろん。どうしたの?」
「話がしたいんだけど、登っていい?」
彼女は一瞬考える素振りを見せたが、笑って頷いてくれた。
彼女のいるてっぺん目指して登り、隣に座った。
「こんな時間に外出てたら家族心配するっしょ」
「あたしのこと心配する人なんていないよ」
「んなこと言って…襲われちゃうよ?」
めちゃくちゃ可愛いんだから、なんて言えないけど。
「大丈夫…あたしは大丈夫なの」
「エラい自信だね」
彼女から目をそらし、夜の海を見つめた。
生ぬるい潮風が吹いて、彼女の長い髪が俺の腕に触れた。

