ザザーと、波の音が静かな夜に響いた。


夜の海も悪くない。


むしろ、人がいないからこそのドキドキ感がたまらない。



岸に沿って歩いて行くと、ひときわ大きな岩が見えてきた。


そのてっぺんを見て、思わず俺は足を止めた。



「うそ……」



ずっと会いたかった人がいる。


彼女は月明かりを浴びながら、目の前に広がる大きな海を見つめていた。


そしてなぜか、それが切なそうに見えた。



ただぼーっとしてるだけかもしれない。


なら俺が呼んで、一緒に話せばいいんだ。


勇気を振り絞り、声を上げた。