きっともうあの人には会えない。


思い出すことさえも、許されないんだ。








「瑠衣、こっちだよ」


俺に振り返って手招きをしながら、彼女は浜辺を駆けていく。


その姿を目で追いながら、俺は彼女の少し後ろを歩いた。



少し行くと、彼女は2つ並んだ大きな岩の間に入っていった。


そこからひょいっと顔を出し、人差し指を唇に当てて微笑んだ。


その仕草があまりに綺麗で、俺は目を奪われる。



「秘密の場所。誰にも言っちゃだめだよ」

「……うん」

「はい、指切り」


小指同士を絡め、俺たちは何度も見つめ合った。