(…何やってんだ、俺。)


引き止めて、裕也は我に帰る。

乃梨子を引き止めたのは、とっさのことだったらしい。


「あの…何ですか?」

「え、あ、いや…――その、」


ききたいことはあった。

オムライスの味の感想だ。

だが、裕也は中々口を開けなかった。


乃梨子の裕也を見つめる瞳が…――澄み切っていたからだ。

全てを見透かしていそうで。


「あの、さ…」

「裕也さん、」

「え?」

「裕也さんと、お呼びしてもよろしいですか?」


そう言った乃梨子の瞳は裕也を射抜くほど強い。

ゆるがない、鋭い眼差しに、裕也は――…


「ぁあ…いい、けど、、、」


片言に、そう返事することで精いっぱいだ。