昨日、私の心を奪ったのは彼でした。




『――注文、何がいい?』


なんだかおかしな雰囲気で席に案内され、メニューを広げる。


「何がおススメですか?」

『乃梨子っ!アタシは賄い料理がおススメだ!』

「え?でも賄いって――」


とびっきりの笑顔で沙希はそう言う。

食べ物の事になると、口をはさまずにはいられないらしい。

私は彼に尋ねたのに…。


それに、賄い料理は、ここの店員さんが食べるモノなんじゃ――…


『裕也、賄い2つ!』

「えっ、沙希…!?」

『了解。少し待ってろ。』

「ぁ――…っ」


乃梨子の動揺なんて気にもせずに、沙希は乃梨子の分も含めて賄い料理を注文してしまった。

裕也が姿を消すと、すぐに乃梨子は沙希に詰め寄る。


「沙希…!一体、何なんですの!?賄い料理というのは、従業員のお食事であって、私たちが食べるものでは…っ」

『あー、いいんだって!あれは、裕也が作ってんだからさ!』

「――え?」


さっきまで血がのぼっていた乃梨子の、口が止まる。

賄い料理を裕也が作っているというのが、とても予想外のことだったらしい。

だから、あんなすんなりと賄い料理のオーダーに“Yes”と…?


『アイツの飯、超旨いんだぜ!』

「―――」


歯を出して笑う沙希を、乃梨子は見つめていた。