昨日、私の心を奪ったのは彼でした。




――バンッ!

『乃梨子~っ!帰ろうぜ!!』

「…沙希。もうちょっと静かに入って来れませんの?」


放課後。

帰りのHRが終わり、先生が教室を出るのと同時に、沙希は教室に入ってきた。

その荒々しい入室に、乃梨子は呆れ顔だ。


『んなこた行ってられねぇよ!裕也に会えるんだ――く~っ!乃梨子も気に入るぜ、きっと!』

「………。」


なんだか大きな一人言を言いながら、乃梨子の鞄をかっさらっていく沙希。

周りが見えなくなった沙希は、誰にも止められない。

だからあえて、乃梨子も何も言わなかった。



『裕也…待ってろよなーっ!』


街中で大声をあげる沙希に、乃梨子は深い溜め息をつくのだった。


――まさか、沙希が招いた先に、あの人がいるなんて、知りもせずに…。