母親の勘というものは怖いもので、美佐子の予想は見事的中。
…だが、そのことを当の本人は自覚もしていない。
『そうねー…。私は…泰蔵さんと、お見合いでお会いしたの。』
「では…政略結婚、ということですか?」
『表向きはそうね。でも…2人で会ってみると、その時間がすごく楽しくて。だから、嫌々ではなかったわ。本当に泰蔵さんを愛していたから。』
「そうなんですか…。」
初めて聞く、母と父の馴れ染め。
自分はちゃんと愛されて生まれたのだと知り、乃梨子は嬉しく思った。
『だから、乃梨子には、乃梨子が認めた殿方と、一緒になってもらいたいですわね。』
「!そ、そんなっ…!私、初恋もまだなのですよ!?お気が早すぎるのではないですか…?」
やっと16歳になって、恋もまだだというのに、もう結婚の話をされて戸惑う乃梨子。
でも、もう乃梨子の周りには、成人になると政略結婚をさせられる人間がたくさんいた。
だから、もしかしたら自分も…と、怖くなっていたのだが、美佐子の話では、そうではないのだと分かり、安堵もしていた。
『あらあら。恋というまでには、まだ時間がかかりそうね。』
「はい…?」
母にはもう乃梨子の心もお見通しであることも、この時の乃梨子は気付かなかった。

