桃太郎と愉快な仲間たち

おばあさんは不安を胸に少年を自宅に連れて行くと、珍しくおじいさんが外で薪を割っていた。

「おばあさんや、その小僧っこは誰じゃ?」

おばあさんは慌てておじいさんを叱り付ける。「小僧だなんて!失礼ですよ」

「何を慌ててるんじゃ?小僧っこじゃろ」

おじいさんとおばあさんのやり取りをにやにやしながら聞いていた少年が「ところでおじいさん」と口を開く。

「松茸やトリュフがあの山にあるって聞いたんだけど、本当にありそうなの?」

「若造なんかに教える訳にゃいかん」

「もう聞いたよ、おばあさんから」

ふん!とおじいさんは横を向いて薪を拾い上げ、また薪割りを始めた。パコーン!

「そう怒らないで聞いてよ。実はさ、ビジネスの話をしに来たんだ」

「ビジネス??なんじゃ!それは」

「ビジネスはビジネス。もしかして知らないの?」

ふん!とまたおじいさんは横を向いて薪を拾い上げ、薪割りを始めた。パコーン!

「それはなんでございましょう?」見かねたおばあさんが横から口を出す。

「簡単に言うと金儲けしない?ってお誘い」

「お金儲け?」

「そう。金儲け。興味あるでしょ?」とおじいさんに向かって言う。

おじいさんはそっぽを向いたまま少年を一切見ない。パコーン!

「僕は楽をして成功したいんだ。おじいさんもおばあさんも今の暮らしが満足なら何も言わないけど、金持ちになりたいでしょ?」

「それはそうですけど……」おばあさんは困惑する。

「興味がないの?そっか……じゃあ、僕は帰って寂しく一人で金持ちになるとするよ」

あ!とおばあさんは少年を引きとめようとするが、おじいさんは薪を割り続ける。パコーン!

おばあさんは困惑し、少年を見たりおじいさんを見たりと忙(せわ)しない。パコーン!


パコーン!

パコーーン!

パコーーーン!


薪の割れる音だけが真夏の空に響く。