『直樹くんも今日まで毎日ありがとうね。働いているせいでなかなか会いに行けなかった私の代わりにごめんなさいね。』

『いえ、ぜんぜん気にしないでくださいよ!!もともと俺が来たくて来てたんだし……。』

『あらあらまぁまぁ、これからもうちの子を宜しくお願いしますね。』

『お母さん!!なんか恥ずかしい!!』

『え~?』
黙って聞いていたら恥ずかしくなってきた。
なんかこう、お見合いとか…けっ…結婚の申し込みみたいな……。


あれから私達は病院から私の家らしいアパートに帰ってきて、直樹とお母さんと私でリビングで話していた。


『ところで柚花ちゃん、家に帰ってきて何か思い出した?』

『ううん、ぜんぜん。』
そう、何か家に帰ったら思い出すかもしれないと思っていたが何一つ思い出せないでいた。


『まぁ、そのうち思い出して来るかもしれないしね。ゆっくり思い出しましょう。』

『そうですね!!焦りは禁物ですからね!!』

『そうよ~、あっ、柚花は明日から学校に行くから時間割とかきちんと見ておかないと駄目よ!』

『はーい!ちょっと見に行ってくる!』
たたたー……

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柚花がいなくなってから先程の明るい空気から暗い空気へと変わっていた。
『お母さん大丈夫ですか?』

『ええ。直樹くんは?』
『大丈夫です。』

『直樹くん、今の柚花が学校へ行っても大丈夫だと思うかしら?』

『……。正直に言うといろんな問題があると思います。』

『やっぱり。直樹くん』柚花の母親は床に手をつき頭を下げた。

『学校で柚花のことを頼みます。』

いきなりの行動で直樹は驚き慌てた。
『お…お母さん頭を上げてください。もとより、俺はそのつもりですから!!』


『ありがとう。』
そう言って目尻に涙を貯めてついには一筋の涙を流した。