「課長、羨ましいんでしょ。

 でも、つぐみちゃんは渡しませんよ」

にやりと笑いながら羽村さんが言う。

そしてそのまま口を

私の耳元までもってくると、

「この続きは、今夜」

と囁き、

ようやく腕を緩ませた。

羽村さんをキッと睨み付けて

素早く離れると、

乱れた心を落ち着かせるように

ゆっくり息を整えた。

「箕輪さん」

ふと課長に呼ばれ、

ちゃんとした返事もせずに

視線だけを向けた。