わたしが落ち着くまで
先生は隣に居てくれた

何も言わないけれど
時々わたしの頭を優しくなでてくれていた

『なんとなく、これで
スッキリ出来たよ』

わたしは今出来る限りの精一杯の笑顔を造って
先生の目を見て言った

『ようやく笑顔が
戻ってくれたな。
黒木は笑顔が一番だよ』

先生も笑顔でわたしを
見てくれていた

『ごめんね、先生』

もう一度先生に謝った

『もう謝らなくていい。俺が落ち込んだ時は
お前の笑顔で、俺を
元気にしてくれよな!
お前が思ってる以上に
みんなを救ってるのは
間違いないんだからな』

ありがとう、先生

わたしは、こんなにも
優しい先生の事が
好きになれて、嬉しいよ

好きになった事を
後悔なんてしてないよ

『家に送ろうか?』

ポケットから車の鍵を
取り出して、笑って
そんな事を言ってくれる

また嬉しくなる言葉を
かけてくれるんだ

『そういうのダメだよ!
特別な生徒なんだって
変に期待しちゃうぞ!』

わたしの冗談を交えた
答えに、先生は笑った

『やっといつもの調子が戻ってくれたな』

『もう大丈夫だから。
あたしは、そんなに
弱くなんかないからさ』

先生の優しい言葉が
苦しくて、嘘をついた

本当はとても弱くて
自分1人じゃ、何も
出来なくなるくせに

辛くて泣き叫びたい
くらいの心情だったのに

わたしは先生に向かって
笑顔で手を振って
学校をあとにした

先生も笑顔で手を振って
見送ってくれていた