“全部わかってたつもりなのに……。きっと誰よりもこうなること……、わかってた。彼の笑顔に『いつか』は来ないとさえ思えてた”

失われていった、健ちゃんの体温。
わかっていた。
わかっていても。

「嫌だよ……」

待合室で、一人泣く私。
健ちゃんのことで泣かないって、約束したのに……。
涙が止まらなく出てくる。

「健ちゃん……」

満月に向って呼びかけた。

「まだいっちゃわないで……。お願い……」

まだ何も聞いてないのに。
まだ何も伝えてないのに。
“いかないで……”

泣き崩れる私。
顔の原形が分からなくなるほど泣いた。

“いかないで……”

何度も何度も心の中で叫び続ける。

“いかないで……”

でも……。
もうこの世に、健ちゃんはいない……。